ビールを知る&体験する
RESTAURANT & SHOP GUIDE
東京 ≫ HopDuvel・ホップデュベル
鶏とビール、双方の「本物」を追求する職人が辿り着いた、焼鳥とベルギービールの究極のマリアージュ。
ベルギービールを楽しむ場所といえば、ビアカフェやレストランを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、「焼鳥屋」という選択肢はいかがでしょうか。
東京・新橋。この地に、若き日にベルギービールの奥深さに魅了され、数十年にわたって焼鳥とのマリアージュを提唱し続けている名店「ホップデュベル」があります。
店主が厳選した素材を使い、職人技で焼き上げる「ここでしか味わえない一串」。そして、約30種類の銘柄から選び抜かれる「最高の一杯」。その組み合わせが織りなす無限の体験が、今夜、あなたを待っています。
INTERVIEW
インタビュー
■ 取材日:2026年4月16日
■ 担当:堀オーナーシェフ
オーナーシェフの堀様に、ベルギービールの魅力と焼鳥のマリアージュについて伺いました。
Q. 焼鳥屋さんでベルギービールという珍しい組み合わせですが、ベルギービールを扱うようになったきっかけを教えて下さい。
独立を夢見て修行に励んでいた若き日、中野にあるベルギービールの名店を訪れたことがすべての原点です。当時のメニューにはただカタカナの銘柄が並ぶばかりでしたが、常連の方に勧められるまま口にした「瓶内二次発酵」の大瓶。その重層的で華やかな味わいに、これまでにない衝撃を受けました。
それからは、自宅で焼鳥とベルギービールの相性を探求する日々が始まりました。特に驚いたのは、脂の乗った「かわ」とビールの芳醇なコクが見事に共鳴した瞬間です。「自分が店を持つときは、この体験を広めたい」と心に誓いました。
Q. カタカナの商品名表記だけでは初心者に注文は難しいですね。それと異なり、こちらのメニューは思わず興味を惹かれる魅力的な説明書きが添えられていますね。
こちらのメニューはうちの女将がキャッチフレーズを考えています。初めて飲む方にもそのビールの個性が直感的に伝わるように、という女将の思いが込められています。
Q. デュベルをはじめ大瓶を多くラインナップされていますね。
小瓶330MLと大瓶750MLは味わいが微妙にことなります。ワインと同様に大きなボトルは液量に対して瓶内の酸素の割合が少なくなるため、熟成が非常にゆっくりと、穏やかに進むのが特徴です。その為、泡立ちやきめ細やかに、味わいはまろやかに感じられます。
Q. ベルギービールの魅力・おもしろさとは何でしょうか?
日本のビールとの大きな違いは、喉ごしだけでなく、ワインのように「香りと余韻をゆっくりと楽しむ」点にあります。
まず驚かされるのは、香りの多層性です。グラスを近づけた瞬間の香りと、口に含んだ後に鼻へと抜ける香りは、驚くほど表情が異なります。さらに、一口含めば甘味や酸味、苦味が複雑に絡み合い、飲み込んだ後の余韻までもが変化していく。この「入口と出口で感じ方が違う事」こそが、ベルギービールの醍醐味です。
そして、もう一つのおもしろさは、それぞれの銘柄に「専用グラス」があることです。
Q.確かに沢山のグラスが棚にありますね。昔のデザインのレアなグラスもありますね。
棚に収まらないので天井からも吊り下げています。グラスで味わいも変わるので最高の状態でお客様にビールを楽しんで頂くために専用グラスは欠かせません。
Q. ベルギービールに魅了され、現地へも渡られていますね。実際に訪問して感じられたことはありますか?
初めてベルギーに渡った2007年は一部の醸造所の訪問にとどまりましたが、
2023年11月に、念願だった複数の醸造所を巡りました。 伝統ある「カンティヨン」では、ジャン・ヴァン・ロイ夫妻からランビックビールの深淵なる世界を学び、「ヴェルハーゲ」ではオーナー自らの案内で巨大な木製樽を拝見し、ラベルに描かれたドゥシャス・アン・ブルゴーニュ(マリー王妃)の墓標に手を合わせることもできました。
中でも、最も心に刻まれたのは「オルヴァル修道院」への訪問です。 自らハンドルを握り、遠路を辿ってようやく現れたその風景は、まるで映画『カリオストロの城』の冒頭シーンを彷彿とさせる風光明媚なものでした。修道院の周りでは羊がのどかに草を食み、時間が止まったかのような静寂が広がっていました。
この辺境の地から、はるばる日本まで届く。私たちが当たり前のように口にしているビールが、どれほどの長い道のりを経て、多くの方々の情熱と苦労によって運ばれてきているのか。その事実に改めて気づかされ、深い感謝の念が込み上げました。
訪問で得た物語をお客様に伝える事で、更にビールを楽しんでもらいたいと考えております。
Q. 店名「ホップデュベル」の店名の由来を教えて下さい。
ベルギーを旅した際、古都ゲントで立ち寄ったお店の「ホップデュベル」という響きに強く惹かれたのがきっかけです。
調べていくうちに、それが現地の伝統的な「収穫祭(ホップ収穫の終わりを祝う人形や祭り)」を意味することを知りました。厳しい収穫の時期を終え、人々が集い、実りを分かち合って喜びを爆発させる——。そんな収穫祭のひとときのように、美味しい焼鳥とビールを通じて、多様な人々が楽しみ、豊かな時間を共有できる場所にしたい。
そういう思いからこの店名にしました。
Q. では今回のおすすめを教えて下さい。
今回はデュベルとドゥシャス・デ・ブルゴーニュにあう焼鳥を用意しています。
鶏は全て地鶏「甲斐路軍鶏」です。
■デュベルには
① だきみ(鶏のむね肉を鳥のかわでつつんだもの)
② 手羽先
③ かわ
④ すなぎも
■ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ
①ねぎま
②まるはつ(鶏の心臓をあえて開かず筒状で焼き上げる)
③ちょうちん(卵の形になる前の卵巣と、殻ができる前の卵を一緒に刺したもの)
⑤ 白レバー(鶏のフォアグラともいえる希少部位)
Q. 地鶏と一般的な鶏肉(ブロイラー)では、味わいにどのような違いがあるのでしょうか?
一般的なブロイラーは、狭い鶏舎の中で効率的に、短期間で成長させることを目的としていますが、対する地鶏は広々とした環境で自由に走り回り、健康的に育てられます。
さらに大きいのは「飼育期間」の違いです。地鶏は時間をかけ、厳選された餌を食べてじっくりと成長します。この「ゆとりある時間」と「十分な運動量」が、噛むほどに溢れ出す力強い旨味と、心地よい弾力を生み出すのです。
Q. 焼鳥とベルギービール。その双方において「本物」の深淵を追い求めるお姿に、深く感銘を受けました。
一本の串、そして一杯のグラスには、それぞれに語り尽くせないほどの物語があります。単に味わうだけでなく、その背景にある造り手の情熱や、はるばる海を越えて届くまでの奇跡を共に頂くことで、食の楽しみはこれほどまでに豊かに膨らむのだと、改めて教わった気がします。
職人が炭火で描き出す伝統と、ベルギーの風土が育んだ至高の一杯。その二つが溶け合う、唯一無二の「物語」をぜひ体験しに訪れてみてください。そこには、あなたの日常を少しだけ特別に変えてくれる、実り豊かな収穫祭が待っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
*掲載のメニュー及び取扱商品は取材時のものであり変更されている場合があります。
Signature Dish & Pairing
オススメ料理とペアリング
SIGNATURE DISH 1
「焼鳥✕デュベル」
「だきみ」のしっとりとした胸肉と香ばしい皮、そして凝縮された旨味が詰まった「砂肝」。それらをデュベルがすべてを包み込んでくれます。 デュベルが放つ柑橘系の爽やかな香味が、鶏の良質な脂や塩味と見事に調和し、驚くほど軽やかに次の一口を誘います。中でも、私の個人的な「最高のマリアージュ」は、単品メニューでも根強い人気を誇る「手羽先」との組み合わせです。手羽先の濃厚な脂をデュベルの洗練された泡が洗い流す。この幸せは、ぜひ皆様にも体験していただきたい。
デュベル 瓶750ml
Duvel
ゴールデン・エールの王者、格別のドライ感と最高品質のホップが生む比類なき味わい。
SIGNATURE DISH 2
「焼鳥✕ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」
続いては、職人の技が光る希少部位の数々。「ネギマ」の絶妙なバランスに始まり、「まるはつ」を噛み締めた瞬間に弾けるソーセージのようなジューシーな脂身に、思わず笑みがこぼれます。 初めて頂いた「ちょうちん」は、口の中でパチンと弾ける食感の後に、濃厚な卵黄の旨味が押し寄せる驚きの体験でした。そして、とろけるような「白レバー」のふくよかな味わいには、『ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ』を。ビールの持つ独特の酸味と甘みが、白レバーのコクを見事に引き立てる圧巻のマリアージュです。 スタッフの方々も、初めてこのドゥシャスを飲んだ際の衝撃が忘れられず、白レバーとのペアリングを熱心に提案されることが多いのだとか。その情熱にも深く納得する、見事な一期一会でした。
ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ 瓶330ml
Duchesse de Bourgogne
オーク樽熟成ならではの酸味とまろやかな甘みが、上質なワインのように調和します。
このお店で飲めるビール

REPORTED BY KONISHI WRITER
ヨシアキ
(社)日本ソムリエ協会認定 シニアソムリエ ベルギービールが持つ「ワインに負けない多様性」に衝撃を受け、その魅力を広めるべくワインインポーターから転身。テイスティングのプロとしての確かな感性で、ビールの個性やペアリングの可能性をわかりやすく解説します。